私がまどかにモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1)

下記作品のネタバレがあります。
ご注意ください。

・「魔法少女まどか☆マギカ」(2011年、シャフト)
・「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語」(2012年、シャフト)
・「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」(2013年、シャフト)
・「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」(2013年、SILVER LINK.谷川ニコ原作)


1. 趣旨

暁美ほむらが「悪魔」になったのはなぜか。
私が当初前提していた彼女の人物像からすると、その必然性がうまく「説明」できません。
そこで、彼女が「悪魔」になったという結果から遡って、彼女の人物像を再解釈してみることにしました*1

その際、補助線として、「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」の主人公、黒木智子(もこっち)をちょいちょい使います。
屈折した自意識から理想と現実との隔たりに苦悩する、という点において、ほむらは智子の延長線上にいると思われるからです。
言い換えれば、孤高ぶっている暁美ほむらを、私達の日常に引きずり下ろして分かったつもりになる、という試みです。


2. 再解釈

(1)[前編/後編](またはTVシリーズ
そもそも暁美ほむらは「心臓の病気でずっと入院してい」ました。
その間、ずっと転校デビューをシミュレーションしていた(にちがいありません)。
もちろん、黒木智子のように「女子高生になれば自然とモテると思っていた」*2かどうかは分かりません。
しかし、ほむらが転校デビューに失敗したのは確かです。

リア充の仲間入りに失敗し、「死んだ方がいいかな」とまで思いつめた末、魔女の結界に誘い込まれたほむらの前に現れた魔法少女
それは、あのとき優しくしてくれた保健係の鹿目さん。
そんな鹿目さんの秘密を知っているのは自分だけ。
だって、「クラスのみんなには内緒だ」から。
自分にもやっと友達ができた。
なのに、死んじゃうなんて。
もう自分には何もない。
また一人ぼっち。

そこで、ほむらが願ったのは、「鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい」。
これは、単に「彼女を守る」というだけではなく、「彼女を守る私」になりたいという意味でしょう(「ほむらちゃんも、かっこよくなっちゃえばいいんだよ」)。
ちゃっかり自己実現的要素が入っている点において、この願いは無私のものではありません(ただし、無私を装った美樹さやかの願いに比べれば、かえって潔いかもしれません)。

それはともかく、これ以降、暁美ほむらの人生は「やり直しのやり直し」の繰り返しです。
すなわち、「失敗してはやり直し、やり直してはまた失敗し、 失敗してはまたやり直す」ということを繰り返しています。
しかも、「時間を遡行」することによって、失敗をなかったことにしてやり直そうとしているのです。
それもそのはず、ほむらが自ら規定した「暁美ほむらの生きる意味」は、「鹿目まどかを守ること」だからです。
言い換えれば、n番目のまどかを守れなかった時点で、n番目の世界で生きる意味はなくなってしまう(と思い込んでいる)からです。
「私の戦場はここ(n番並行世界)じゃない」

ただし、この考え方には、ほむらが守るべき「鹿目まどか」とはいったい誰のことなのか、という問題があります。
任意の並行世界において「鹿目まどかという属性を持った個体」なら誰でもいいのか。
言い換えれば、「このまどか」を救うために、「他のまどか」を犠牲にすることは構わないのか。
そもそも、「時間遡行」というのも、なかなか理解が難しい概念です。
「並行世界間の移動」と解釈するのならば、それは逆に未来へと「時間を下る」ことなのではないかとも思われます。
だとすれば、それは「来世から本気出す」(「私がモテる未来までこの世界を赦さない」*3、「全てが変わる未来で会おう」*4)と同じなのではないでしょうか。
むしろ、失敗をなかったことにするという点において、より悪質(?)であるとも言えそうです。

しかし、いずれにしろ、ほむらのこの考え方は、([前編/後編]における並行世界の)まどかの「犠牲」によって肩透かしを食らいます。
すなわち、ほむらは、まどか本人の祈りによって、「鹿目まどかは救われた」という解釈の転換を余儀なくされるのです。
同時に、暁美ほむらの生きる意味も、「かつて、あの子が守ろうとした場所」で「戦い続ける」ことだと自分に言い聞かせざるを得なくなります。
「覚えているのは、私だけ」というのが、辛うじて納得できる妥協点でしょう。

私がまどかにモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(2)につづく

*1:内容的には、前記事「【ネタバレ】「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」を観て、以下の問いに答えよ。(配点 100) - 流れるアニメとよどむ目」において挙げた「二次創作説(自意識誤想過剰防衛説)」を掘り下げたものになるのではないかと思います。

*2:私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」(2013年、SILVER LINK.)ストーリー紹介

*3:同上オープニングテーマ曲「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」(2013年、キバオブアキバ作詞・作曲・編曲、鈴木このみ n’ キバオブアキバ歌)

*4:同上